在宅介護・訪問看護

現役訪問看護師から介護者に伝えたい。介護の心構えを3つ紹介。

私は訪問看護師という職業柄、日常的に介護者に対して接しています。

介護が始まったばかりの方のところに訪問した際、下記の言動を良く聞きます。

「自分の親が病気になり、介護が必要になった」

「まさか自分が介護する側になるなんて」

実親の介護に直面するとショックを受ける人は多いです。「昔は元気だった親」というイメージに引っ張られやすいように思います。

本記事は、介護をはじめたばかりの方、実親の介護をすることになり、介護の心構えを学びたいと思う方向けにつくりました。

記事の内容は以下の通りです。

  • なぜ、介護が必要になるのか?
  • 介護の心構え① 誰でも介護は必要になる、という前提を
  • 介護の心構え② 介護は一人で我慢するものではない
  • 介護の心構え③ 在宅介護を支える人の力を借りて、チームをつくる
  • まとめ

それでは、はじめていきましょう。

なぜ、介護が必要になるのか?

要介護者等について、介護が必要になった主な原因について見ると、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっている。また、男女別に見ると、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と特に多くなっている

引用:内閣府 令和3年版高齢社会白書(全体版)第2節 高齢期の暮らしの動向(2)2 健康・福祉

認知症、脳卒中などの脳の障害によって、介護が必要になるケースが多いことがわかります。

骨折・転倒で寝たきりになるというのも、聞いたことがある方も多いと思います。

認知症の有病率は年齢とともに急峻に高まることが知られています。現在、65歳以上の約16%が認知症であると推計されていますが、80歳代の後半であれば男性の35%、女性の44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症であることが明らかにされています(表1)。わが国は世界一の長寿国であり、認知症と共に生きる高齢者の人口は今後も増加し、2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になるものと予測されています(表2)。

引用:東京都健康長寿医療センター研究所 認知症と共に暮らせる社会をつくる 認知症と共に生きる高齢者の人口

ちえさん
高齢になるほど認知症の発症リスクが高まると言われています。認知症の原因について不明な部分も多く、特効薬は存在しません。認知症の発症に関しては、誰の責任でもないと考えた方がいいかもしれません

認知症になると、物忘れが増え、記憶力・判断力が低下が進み、日常生活を送ることが困難になります。

病気や衰弱によって、入院生活による体力低下と後遺症が残り、自立した自宅生活を送ることが困難となるケースも多いです。

介護は「病気」「衰弱」「認知症」によって、介護が必要になるケースが多いのです。

介護の心構え① 誰でも介護は必要になる、という前提を

上記で解説した通り、加齢によって病気や認知症になりやすくなります。

加齢や病気によって体力が衰えたり、障害が残るとできなくなることが増えるのです。

例えば、

  • トイレに自力で行けなくなる
  • 食事の準備も困難になり、食事の介助も必要になる
  • 着替えができなくなる
  • 寝たきりになり、活動不足で便秘になる。便の処置も必要になる
  • 一人での移動ができなくなり、車椅子に移乗してもらう。

これらは、病気や認知症の発症によって誰でも起こりえることです。

さとの
病気や認知症によって、介護が必要になります。自分の親や自分自身も例外ではりません。そういった意味では、誰でも介護は必要になる、と考えておいた方がいいです

親の介護が始まった時にはショックを受けることもあります。

介護に慣れてきて、気持ちが落ち着いたら、今度は親が介護を受ける番なんだな、と思うくらいが気が楽かもしれません。

介護の心構え② 介護は一人で我慢するものではない

一般的な介護に対するイメージは「我慢」「しんどい」「孤独」ではないでしょうか?

私自身が訪問看護師なので、「我慢」や「しんどさ」を訴える介護者を見ることはあります。

もちろん、介護者は楽ではありません。

しかし、介護は一人で我慢するものではない、と私は考えています。

毎日寝不足になって、肉体的・精神的に追い詰められるまで介護しなくてはならない、とは思えません。

介護者が一人で抱え込んでしまい、あっという間に疲れ果てて、体調を崩すケースをたくさん見てきました。

一人で抱え込まない介護者は、長く介護生活を続けています。

例えば、

  • ショートステイに泊まってもらい、その間に温泉旅行に行く。
  • 訪問看護師やヘルパーが来ている間に、買い物にでかける。
  • 娘や息子さんに手伝ってもらって、ゆっくり眠る。
  • デイサービスに行ってもらい、一人の時間をつくる。

「何でも私一人でやろう!」という方は疲れやすく、体調を崩すこともあります。

「オムツ交換の時間だけど、もう少しで看護師さんが来るから、交換せずに待ってよう。看護師さんに今日は任せよう」くらいの気概の方の方が、長い介護生活に適応できます。

ほどほどに手を抜くというのも、介護を長く続ける上で、大切な考え方だと私は思います。

介護の心構え③ 在宅介護を支える人の力を借りて、チームをつくる

在宅介護を支える、下記のような人たちがいます。

  • 医師
  • ケアマネージャー
  • 看護師
  • 薬剤師
  • リハビリ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)
  • ヘルパー
  • 歯科医師
  • 管理栄養士
  • 訪問入浴
  • 福祉用具
  • デイサービス、ショートステイなどの地域サービス

上記の人たちは、在宅介護を支え、在宅を訪問してくれるスタッフです。

在宅介護を支えるためにチームとなり、多くの人が力になってくれます。

介護を受ける方に中心として、在宅介護チームが連携すれば、長期間の介護生活にも対応する可能性が高まります。

チームは家族の意向をくみ取ってくれます。チームは一人で抱え込まずに、何事も相談することをお勧めします。

ちえさん
チーム〇〇(〇〇のところに名前)と言いながら、介護チームの結束を高めるご家族もいます。自分だけの介護専属チームがいるのなら、使わない手はありません

まとめ

本記事では、介護する上での3つの考え方についてまとめました。

  • 介護の心構え① 病気や認知症によって、誰でも介護が必要になる時はくる
  • 介護の心構え② 自分の体調に気をつけて、自分の日常生活を大切にしよう
  • 介護の心構え③ 在宅介護を支える人の力を借りよう

これらを意識するだけでも、介護の気持ちや負担を減らすことができます。

介護生活は楽ではありませんが、他者の力を借りながら乗り切ってほしいと切に思います。

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